展示会期間ももうすぐ終わりですが、23日の水曜日に滑り込みで名古屋市博物館の
魔女の秘密展に行ってきた。
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名古屋市博物館「魔女の秘密展」チラシ。 持ってくる時にちょっとまがっちゃった |
小中学生の頃はハリー・ポッターマニアだったこともあるし、ハリポタ5巻を読んで興ざめして以降も『よくわかる現代魔法』が好きだったりしたので、少なからず「魔女」という存在が好きだった。というのも行ったきっかけの1つだったが、直接のきっかけは「拷問道具の展示がある」ということを見かけたからだ。
わたしは痛いのが嫌い(注射も嫌)なのだが、「嫌いだからこそ知りたい」という怖いもの見たさ、あるいは一種マゾヒスティックな感情により、拷問に興味がある。グロ耐性は無いし、本質的には痛いものが嫌いなので写真とかは見られないのだが、(あまり描写の生々しくない)文献を読むことや、拷問道具には興味がある。
最近わたしはオトカドールにハマっているので魔女といえば
魔女っ子エンビーちゃんなのだが、この「魔女の秘密展」の内容はそんなカワイイものではなかった。
「魔女の秘密展」では、魔よけのまじないの道具、「魔女裁判」に関する書物や拷問道具、“魔女”をテーマとした絵画など約100点の展示資料で、わざわいをもたらす者としてのヨーロッパの魔女像から現代日本のコミックに登場する“魔女”たちまでを紹介します。“魔女”、そのイメージのうつりかわりをご覧ください。
公式サイトの紹介文にこうあるように、中世ヨーロッパにおける「魔女」がどういう存在だったのか、そしてなぜ魔女狩りが発生し、広まり、終焉したか。その後「魔女」はどのようなイメージを持たれるようになったか……。「魔女」を取り巻く状況や魔女に対する人々のイメージの変遷を時代を追ってたどる展覧会であった。
まず入場時、音声ガイドを借りるかどうかを選ぶ。これは昨今の特別展ではよくあるものだが、魔女展では「白猫」「黒猫」の2バージョンから選ぶことができた。マイルドな「白猫」と、過激な表現を含む「黒猫」。
わたしは当然黒猫を選んだのだが、白猫では解説がある展示が黒猫にはなかったり、あるいは逆もあったので、気になる人は両方借りるか、2周してそれぞれ聴くかするといいかもしれない。終了間際の今の時期では2周は難しいかもしれないが……。浜松会場に行く予定のある方はご一考下さい。
ただ、魔女展の音声ガイド(黒猫)は展示に添えてある解説文以上のことはほとんど言わなかったので、あまり聞く意味もなかったが。
最初のエリアは魔女狩りが始まる前の魔女についての展示だ。人々が信じていたまじないや、悪魔に対する恐れ、錬金術など、そんなようなものに対する展示があった。
わりと入ってすぐのところに「もぐらの前足のお守り(実物)」やら「薬として使われた人間のミイラの頭部(実物)」など、エグい展示があって「これはラジオ聞きながら黒猫とほうきで飛んでるような魔女に対する展示ではない」ことを過剰なまでに主張していた。いい雰囲気だ。
錬金術のコーナーでは珍しく音声ガイドの黒猫が解説文以上の説明をしてくれたのだが、「錬金術士はホムンクルスという人造人間を作ろうとしており、その原料は人間の精液」だと教えてくれたのだが、こんな魔女展に来て黒猫を選ぶような人間ならばおよそ知っていそうな知識である。役に立つんだか立たないんだか。
さて、次は魔女狩り直前の歴史だ。魔女狩りの要因となった出来事を説明していた。
まずはルターの宗教改革による、カトリックとプロテスタントの宗教戦争。
ここでの「黒猫」は「マルガレーテ・ピュルヒフェルナーの手のミイラ」である。マルガレーテの家はプロテスタントだったのだが、マルガレーテはカトリック者と結婚するためにカトリックに改宗しようとした。それに激怒した過激なプロテスタントの兄は、怒りに任せてマルガレーテの手を切断したという……。その兄は後に死刑になったそうだが、マルガレーテはその後どうなったかわからないそうだ。
その他、14世紀半ばから19世紀にかけて世界的に寒冷な気候であったことやそれに伴う貧困、ペストの流行、戦争の多発が魔女狩りを産んだ背景として紹介されていた。
そして、グーテンベルクの活版印刷により、魔女について書かれた本が流布したことも一因として挙げられていた。魔女とは何か、魔女が何をするか、魔女を自白させるためにどのような尋問や拷問を行うべきか、をまとめたハインリヒ・クラーマーの『魔女に与える鉄槌』も、印刷技術により広まり、「魔女」の迫害に繋がった。メディアが人々を迫害に向かわせるのは今も昔も変わらないですね。活版印刷の発明と魔女狩りはわたしのなかでは全く別の事象だったので、それらがつながっていたのだと気付かされて面白かった。
そして魔女の魔術によるものと思われていた畸型の動物の展示もあった。展示されていたのは当時の生き物ではないが……。
展示されていたのは双頭の仔牛の頭、そしてホルマリン漬けの双頭の仔猫だった。展示されていた双頭の仔牛をみると、神戸は文明堂薬局の双頭の鹿の剥製も本物かもしれないと思えてきた。
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文明堂薬局の双頭の鹿。当然ながら魔女展とは関係ないけどね |
そして当時の魔女のイメージが反映された絵画もいくつか。
次の展示が魔女狩りの拷問、処刑の展示だった。
苦悩の梨、親指締め、スペインの長靴といった拷問道具の展示があった。自分で説明を書くより引用のほうがいいだろうので、これらの説明は拷問&処刑botさんから。
スペインの長靴に関しては名古屋市博のサイトの魔女展ページにあるのでそちらを。
以前から存在は知っていた拷問道具だったが、実物を見られるとは思っていなかったので貴重な体験だった。
公式図録によれば、"拷問には厳しい規定があり、たとえば、数時間を越えての拷問は、1つの尋問について1回しか許されていませんでした"とのこと。数時間を超えない拷問なら何度も行われるのだろうか……。
図録には収録されていないが、ここでは拷問を受けた「魔女」が隠れて家族へ宛てて書いた手紙の内容が2つ、音声で紹介されており、その内容もかなり辛いものがあった。
女性の手紙の方は拷問を受ける前に出した手紙と、受けた後の手紙が連続で流れる。拷問を受ける前は「神がわたしの無実を証明してくれるはず」などと前向きな無いようだが、拷問後の心境の変化は、凄惨であった。
そして男性の方は(魔女狩りは男性も対象になることがあった)、娘に宛てた手紙だったが、「指の感覚がなくなっている」だとか「おまえに会うことはもうない」だとか、こちらもかなり精神に来る。
あとは拷問椅子。
この椅子、ほとんど木で出来てるんですね? あんまり禍々しくなかった。「見せる拷問道具」の可能性があるらしいが、そんなに怖くは見えない。もしかしたら、この椅子を見せる前に針などの尖ったもので散々痛めつけ、突起物への恐怖を植え付けてから見せるのかもしれない。
そして拷問の後は「処刑」だ。
フランケンタールの斬首用剣、死刑執行人の鉄マスク、処刑用車輪、死刑になった魔女が着ていた服(これは複製だったが)など、展示品を列挙するだけでも実に禍々しい。
火あぶりの刑の再現をした展示があったけど、これはなんかよくわからなかった。火の映像が流れてただけ、みたいな。
そして最後のコーナーが魔女狩り終焉後の「魔女」だ。
魔女狩り以前、最中も魔女の絵は描かれていたが、それはほぼ常に禍々しいイメージの絵であった。魔女狩り終焉後はそうではない「魔女」も描かれるようになった、という絵の展示だった。
日本で「魔女」にほとんど全く悪いイメージがないのは、「キリスト教的感覚が無いところに、魔女狩り終焉後の魔女のイメージが入ってきたからだ」というような説明が書かれていて、まあ当然っちゃあ当然なことなのだが、なるほどなあと思った。
そして展示の後は当然グッズ売り場なので、いろいろ買ってきました。公式サイトのグッズ一覧は
こちら。
まず「魔女の秘密展 公式図録」。2000円でこの内容ならかなり安い。まだ全部は読んでいないが……。
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帯を外すとこんな感じ。かっこいい。 |
「魔女カレー 魔界の辛口」。648円だったかな。まだ食べてないので魔界がどれほど辛いのかは不明。
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このグッズは公式サイトに記述がない。 |
ポストカード。130円。2種類買った。
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これも公式サイトには記述がない。 まあ公式グッズにはつきものなのでわざわざ書くこともないか。 |
そしてマスキングテープ。これは432円。
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柄はもぐらの手のお守り、骸骨、死刑執行人のマスク。 なかなか禍々しい。 |
そして昼ごはんは博物館併設のカフェで食べた。展示会期間限定メニューの黒カレー。
黒カレーはわりと甘めなのにスパイシーで舌がチリチリするという謎の代物でした。
一緒にウインナーコーヒーを頼んだのだけど、こっちは写真撮ってる間に生クリームが全部溶けるという事態が発生しウインナーコーヒーのアイデンティティを失った。当然美味しくなかった。