2015年7月23日木曜日

下賎なる墓暴きの記憶(2)

さて、ニンジャスレイヤー関係のウェブ・アーカイブを掘り返すこの企画も第2回です。第2回の内容は、

  1. 2000年台初頭のニンジャスレイヤー関係者は現在の誰として活動しているか?
  2. mixiコミュ「ニンジャスレイヤー」をどう考えるか?
  3. 忍殺のクールな英語的表現は原作者の実在を証明するか?

の3点を中心に考えていきます。

前回の記事では、ニンジャスレイヤー英語原作は存在しないことをしょうめいしました。



ニンジャスレイヤーの源流は、日本語話者である「ダユ」氏が『絶対虚構機構』というサイトにアップした小説です。

旧ダイハードテイルズ関係者は今の誰だ?

もうちょっとこの真の原作者たちについて考えよう。
「Black Fire」氏の小説「クトゥルフ・イナ・アパートメント!(予告編)」に「フィリップ・モーゼズ」という人物が登場する。また、「Black Fire」氏は「BFリアルニンジャ」という筆名も使っていた。
また、「ダユ」氏の小説「パンクナイト」には「ブラッドレー・ボンド」という名前が登場する。

以上のことから
「ダユ」=「本兌有」=「ブラッドレー・ボンド」
「Black Fire」=「フィリップ・ニンジャ・モーゼズ」
であると考えられないだろうか?

「ダユ」氏が「本兌有」氏ではないか? と疑うのは、単に「ほんだゆう」に「だゆ」が入っているから、という安直な理由でもある。
杉ライカ氏についてはよくわからない。DIEHARDTALES2に名前があるが、杉ライカ氏の著作とされる「夏の終わり」 、「ガス屋ヴァイオレンス」はウェブ・アーカイブされていないので、文章から考察することもできない。
それ以前のBF氏やダユ氏の交友関係にも、あまりそれらしい名前が出てこない。BFFFや絶対虚構機構にリンクが貼られている、"『鷹と杉』−創作小説オンライン文芸部"というサイトに"間宮らいか"という名前が見えるので、このあたりから名前が来てたりするのだろうか? よくわからない。
でもまあ、BF氏とダユ氏がニンジャスレイヤーの原作者であり、ダユ氏を本兌有と同定するならば、杉ライカはBF氏であろう……多分。

で、パーニンソウルの牛男爵氏なんだが、彼のサイトの雑記に「ハートチップル賛歌」というのがあって、これが逆噴射聡一郎氏の「ドリトスが、おれの道を教えてくれる」に似ている。似ているからって同一人物と断定するのも無理があるが、牛男爵氏は自身のサイトのBBSの2004年ごろの発言や、mixiでもニンジャスレイヤーについて言及しており、とりあえず関係者であることは間違いない。

mixiコミュ「ニンジャスレイヤー」についてどう考えるか

ああ、mixiコミュのあの内容ですが、あれは2000年台初頭のニンジャスレイヤー関係者が集まって、「架空のアメコミ『ニンジャスレイヤー』をさも実在するかのように語る遊び」をしてたんだと思います。

特にそれが顕著なのは「【PPG発見トピ #1】」である。アメコミ版ニンジャスレイヤーのページに隠されたパワーパフガールズのキャラクターを探すトピなのだが、まずはご一読いただきたい。不自然さを感じないだろうか?
まず、こういうのは普通、見つけたら写真でも撮って共有すると思うのですよ。
次。そのコミュにいる人はある程度アメコミ版ニンジャスレイヤーを所有している人たちのはずなのに、
 #177の"Ninja with the Unforgiven"の13ページ目、ヨロシ=サン製薬の下水道から脱出を試みるニンジャスレイヤーの前に、死んだと思われていたアメーバニンジャ『アンフォーギヴン』が立ちはだかるシーンを読み直していて気付いたのですが、セリフと効果音の頭文字を読んでいくとバブルスになります。
Beware, incoming ...
the Unforgiven, its my name....
But...
But...you cannot be here...Go back to HELL!!
Laughable...! I'm still alive yeah!
End is here, Ninja Slayer san! Die NOW!!!
Splaaaaash!!!
 どうでしょう? 考えすぎでしょうか? 皆さんの意見を聞きたいです。
っていう感じで、やたら過剰説明なんですよね。普通こういうトピって、「n巻のmページ目の右上あたりにバターカップいました![画像添付]」とかいう感じに盛り上がるトピだと思うんです。

他にも、
 アポカリプス・コミックスから船便が届きました。
 いい加減にAmazonでも取り扱ってほしいけれど、ISBNがないうちは無理なのかも。Dark Ninja Pressはいつまでアングラを気取るつもりなのでしょう。
 ストーリーは相変わらず例の二人。絵はデイヴ・マッキーンが担当。表紙だけかと思ったら、16ページ全てマッキーンでした。これだけでもかなりお得です。が中身自体は、ニンジャソウルの暴走でいとこを不具にしてしまった(#240参照)フジキド・ケンジが、罪の意識にさいなまれ、時々悪夢を観たりしながら終始布団の中でモソモソしているだけの暗い話です。
 ようやくノヴェル版の第2シーズン第3部に追いついたというところで、2部の総まとめ的内容になっていました。ノヴェルどおりならば、次回からはキョートに行くはずなのですが、こんな終わらせ方をして繋げられるのか心配です。またサイドストーリーに持っていって、読者が気付いた頃にはいつのまにかフジキドが元気になっているパターンかも。

という非常に具体的なトピがあって、わりかしリアリティを放っている。
アポカリプス・コミックスってのはアメリカ合衆国はシカゴに実在したコミックストアのことだと思われる。2005年ごろにはまだやってたようだが、現在は閉店している。
Google ストリートビューより。2014年の写真である。
真ん中の何もないショーウインドウがApocalypse Comics跡地と思われる。
そして、デイヴ・マッキーンは、結構有名な人なんですね。実際にアメコミにも関係している。のだが、マッキーン氏の活動を漁ってもニンジャスレイヤーの文字が見つからない。#241まで刊行されているような作品に関わっているのならば、業績に数えられていても良さそうなのだが。
そして、この記事にはコメントがついていない。PPGトピから考えるとコミックスの現物を持っているメンバーがたくさんいると思われるのに、最新刊購入報告トピにコメントが付かないのも不自然ではなかろうか?
アポカリプス・コミックスやデイヴ・マッキーンといった、実在する店舗や人名を使って、ニンジャスレイヤーが実在するかのように見せかけるトリックではないか? と疑ってしまう。

「このコミュの明日」という意味深なトピックに、
500トピックくらい溜まったらアメコミコミュに宣伝に行きます
と書いてあるが、これも「ある程度リアリティのある情報が蓄積された架空のアメコミをアメコミコミュに宣伝に行くとどういう反応が起きるか?」という実験のような気がする。「ニンジャスレイヤー」というアメコミが実在するならば、500トピ溜まらずとも宣伝に行けるわけで。

また、自己紹介トピには、
まず退会したユーザーからの情報として

  • 1997年、San Diego Comic-Con '97の会場の外でブラッドレイとフィリップがNinja Slayer(同人誌)を売っていた
  • 2000年、Dark Ninja Pressなるインディーズ出版社から、Ninja Slayerというノヴェルが発売される
という情報が語られるが、NEOSiJでは、
  • 1996年、Ninja Entertainment社からノヴェル「Ninja Slayer」が発売される
  • 2000年(サイトフッターより)、NE社のNS既刊は9巻に達する
となっていたので、情報の食い違いが見られる。また、NEOSiJではニンジャスレイヤーの作者はマクドガル・ニンジャとブラッドレー・ボンドなので、そこも違う点といえるか。マクドガルが途中で筆名をフィリップにしたと考えれば良さそうだが、実際そうだったらmixiでは"ブラッドレイとフィリップ(当時はマクドガル)"とかいう表記をしてそうな気がする。

このトピの[2]で「AkatakA」氏が
  • 2002年、ホームステイ先の忍者マニア家族からNinja Slayerを勧められる
  • 当時読んだエピソードは「Ninja at midsummer」
という情報が寄せられる。この方は、日記の方でもニンジャスレイヤーの話をしていて、そちらでは
  • 昔好きだったニンジャスレイヤー
  • 押し入れをあさって久しぶりに読む
  • ビジネスニンジャとの名刺交換の場面は、Ninja Slayer屈指の名場面
というようなことを語っていて、なんか「Ninja Slayer」って実在するんじゃないか? って気になってくる……。確かにエシオとの名刺交換シーンは忍殺屈指のめいばめんです。

ただ、このコミュには牛男爵氏も参加してたりするので、2000年台初頭の、「ニンジャスレイヤー」がダイハードテイルズ組の創作であることを知ってるメンバーが集まってるコミュのような気がするんですよね。

忍殺のクールな英語的表現は原作者の実在を証明するか?

たぶん、しない。BlackFire氏もダユ氏も翻訳小説好きだし、特にダユ氏は洋ロックに深い造詣がある。おそらく、今はかなりそういう方面の活動をしていると思われる。であるからして、音楽的クールな英語についてはかなり知識があるのだと思う。

また、小天狗おじいちゃんの昔語り - Togetterまとめによれば、杉ライカ氏は"原書を読み、海外に出かけ、コミコンなどにも足繁く通っていた"そうで、かなり外国語(英語だろう)が堪能だったようだ。

長文書きすぎて疲れた。ここで終わります。

2 件のコメント:

  1. ドーモ、杉氏がダイハードテイルズのnoteで公開した旧HNを検索してこのページにたどり着きました。驚愕のほんやくチームしんじつにリアリティショックを禁じえません。

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    1. ドーモ! 閲覧ありがとうございます。最近はnoteでそんなことをやってるんですね……。第3部最終章で個人的に盛り上がりすぎて、それ以降は若干忍殺から遠ざかってまして……。
      この記事を書いて以降に発見したものや、やや情報が古くなったものもあるので、そのnoteを読んでからまた新しくまとめ直したいなあ、と思います。

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