アメとヨミについては予想通り、前回した予想の上をいかれましたね。
ただ、「あいの影」がユングの精神分析における「影」であるという予想は当たった気がします。
アメはホンキのときに「古い服と同じさ。体が大きくなれば窮屈になっちまうだろ? それだけのことさ。」と言ったり、「大人になりな。大人になって強くなって、それから考えな」(こっちは録画してなかったのであいまい)と言ってくるので、やっぱり「大人になる」「自己を確立する」ことがAct編のテーマなんだなって思う。
ミカ子が“母”で、母を嫌うルシ子が「エディプスコンプレックス」だったのかな? そして今回は影との対決と和解(ツーショット撮れる)、順調に思春期をステップアップしてますね?
さて、今回はアメとヨミが日本神話モチーフだったので、古事記好きなわたしとしては楽しいです。ただ、オトカの方はどっちかというと日本書紀っぽいんですけど。
これから先の記事は長くて読みにくいので、要点を箇条書きにした目次っぽいのを置いときます。
- ヨミはツクヨミとスサノオとヤマトタケルのミックス?
- 「ウケモチ」は別離の象徴
- スサノオとエディプスコンプレックスと黄泉の国
- 「ヨモツノツカイ」と「ヒヨクノミミカザリ」──別離と結合
- アメはアマテラスとアメノウズメのミックス
- アメの技──稲作と天孫降臨
「ヨミ」の元ネタ考
どうやらヨミはツクヨミをベースに、スサノオ、ヤマトタケルあたりも混ぜてるっぽい? 元ネタがツクヨミだけとすると説明がつかない持ち物なども多い。ヒメモードが「叢雲の太刀(ムラクモノタチ)」だが、これは叢雲の剣、スサノオがヤマタノオロチの尾から見つけた剣であり、後にヤマトタケルに渡るクサナギノツルギである。御存知の通り「三種の神器」の一つだ。また、クサナギノツルギを手に入れる前の話だが、ヤマトタケルは女装して宴に侵入し、クマソタケルを殺したことがあるので、ヨミの男の娘っぽさの元ネタの一つかもしれない。
ヨミのもう一つの元ネタと思われるスサノオの方は、もともと海を治めるようお父さん(イザナギ)に言われたのだけど、なんやかんやあってお母さん(イザナミ)のいる黄泉の国と少なくとも出入り口が共通している「根の国」を治めるようになります。なので、「ヨミ」の名は「月読」と「黄泉」のダブルミーニングなんじゃないかと思う。
あいに協力しようとするのはスサノオの父に反抗して母のもとに行こうとするエピソードがエディプスコンプレックスっぽいからですかね? 自己確立に悩んできたもの同士として?
別離の象徴「ウケモチ」
ヨミは狐の面を持っているが、狐関係のアイテムには「ウケモチ」の名が冠されている。ウケモチは「保食神(ウケモチノカミ)」という穀物神のことで、トヨウケビメやオオゲツヒメ、ウカノミタマなどと一緒に「稲荷神」に習合された神だ。ウケモチはツクヨミとのエピソードがある。以下、角川選書『世界神話辞典』の151ページから引用する。
『日本書紀』の神話の主人公のウケモチもやはり、体内にありとあらゆる種類の食物を持っていて、それらを口からいくらでも吐き出すことができた。あるときアマテラスが弟の月神ツクヨミを地上におろして、この神を訪問させた。ウケモチは口からご飯、魚、鳥や獣を吐き出してごちそうを作り、ツクヨミを歓待するが、
ツクヨミは顔を真っ赤にして怒って、「口から吐き出したものを食べさせるとは、なんという汚いことをするのか」と叫び、剣を抜いてウケモチを斬り殺した。そして天に帰ってそのことを、詳しくアマテラスに報告した。アマテラスは大変に立腹して、「あなたは悪い神なので、顔を合わせないことにする」と、言い渡した。それでこのときから、太陽のアマテラスと月のツクヨミとが、昼と夜の空に別れて出るようになった。このようにウケモチはツクヨミとアマテラスの分断のきっかけになった神でもある。どっちかというと稲荷モチーフだと「ウカノミタマ」のほうが一般的のような気がする(個人的に『いなり、こんこん、恋いろは』の印象が強いせいかもしれないけど)。しかし、光である「あい」と「あいの影」の分断のストーリーのために、狐の面は「ウケモチ」の名でなければならなかったのだろう。
また、この事件の後からアマテラスが稲を育て始めるので、「稲妻」を使うアメのイメージ元ととしても関連付けられそう。
一方、ツクヨミとウケモチのエピソードと似た話を、スサノオとオオゲツヒメも持っている(これはわたしがヨミの元ネタにスサノオも入ってるんじゃないかと思う理由の一つでもある)。
オオゲツヒメという女神は体の中に様々な食物を持っているのはウケモチと同様だが、それを口からだけでなく鼻と尻からも出せるという点でウケモチと違う(これが語られるのは過激さに定評のある古事記だしね)。
あるときスサノオがやってきて、食物を求めたので、このやり方で出したものを、いろいろな御馳走に作って食べさせようとした。ところがスサノオは、食物を出すところを覗き見していて、体から出した汚いものを食べさせようとしていると思い、怒って女神を殺してしまった。ちなみにウケモチやオオゲツヒメのその後だが、両者とも死体からは稲を始めとする穀物が発生する。この「体から食べ物を出せる女神が、汚いと思われて死に、その死体から主食になる作物が生まれる」という神話は広大な地域に存在し、「ハイヌヴェレ型」と呼ばれるが、それはオトカとはたぶん関係ないので割愛します。
別離と結合のアクセサリー
ドロップするアクセサリーの「ヨモツノツカイ」と「ヒヨクノミミカザリ」だが、「ヨモツノツカイ」は「黄泉遣」? ヨモツのツは連体修飾語を作る「つ」、つまり現代語の「の」と同じはずなので、「“黄泉の”の遣い」みたいに意味が重複してそうだけど、なにか意味があるのだろうか。「ヨモツシコメ」なんかを連想してほしかったのかもしれない。ヨモツシコメやヨモツヒラサカが出て来るエピソードは、イザナギとイザナミの別離の物語である。そして「ヒヨクノミミカザリ」のほうは、「比翼の鳥」は中国の伝説なのであまり和風ではないのだが(比翼の鳥と連理の枝が出て来る有名な白居易の『長恨歌』は『源氏物語』にも『枕草子』にも影響を与えているのでもはや和風っちゃあ和風なのかも)。「雌雄それぞれが目と翼を一つずつもち、2羽が常に一体となって飛ぶ(「大辞泉」)」という存在なので、「分かちがたい二者」の象徴としての登場か。
ヨミの話だけでだいぶ長くなってしまった。そろそろアメの話に移ろう。
「アメ」の元ネタ考
アメの方はアマテラスとアメノウズメを混ぜてるっぽい。というか、「岩戸開き」のキャラクターなんじゃないかって気がする。セリフ回しとかが芝居がかってるのはアメノウズメが芸能の女神だからだろう。アメノウズメとアマテラスの接点は何度かあるが、ここで重要なのは当然、「岩戸開き」だ。有名すぎるので詳細を割愛するが、アマテラスがスサノオの横暴に耐えかねて岩戸にこもり、それを引っ張り出すのに活躍したのが「アメノウズメ」たちで、ここで登場する小道具が「ヤタノカガミ」、「ヤサカニノマガタマ」だ。
あとなんかハレとケの話もアメの歌に出てきたりしてますね。なんとなく民俗学的で嬉しい(大学で民俗学をちょっとやってたので)。
ハレつながりということなのか、商売繁盛の熊手モチーフの武器(熊手は実際に武器としても使われる)を持ってたり、「吉祥」の名の付く服を着ている。吉祥天……は関係ないか。元七福神らしいし無関係ではないかもしれないけど。
アメは稲を育てる
サンダー、ウインド、アクア、グローリーネメシス(シャイン)は稲作のための技だろう。風、水、光で稲を育てる。サンダーは稲妻であり、その語源は「稲の夫(つま)」、雷が稲を実らせるという信仰があったためにつけられた名前だ。よってこれらの技はおそらく稲作に由来する。もう一つメテオストライクも使えるが、こちらは直接は関係なさそう。隕石関係の神としては紀に登場する「アマツミカボシ」が存在するが、これはアマテラスとは関係ない。メテオとは天からくだるもの、つまり天孫降臨を表しているんじゃないかという気がする。
サンダー使用時に「青天の霹靂」というが、青天は文字通り青空、霹靂は雷のことだという。まことにはれならずということぞなき。
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